プロジェクトストーリー

Project Story 02

高度な技術と人の想いが重なり合い、
未来のために築き上げられた
護岸の物語。

武庫川の河川敷公園で行われた低水護岸工事。
水や転石への対処、ICT技術の活用、そして公園利用者への安全配慮。
自然条件・環境・革新技術のすべてに挑んだ日々が、
街の安心・安全を形にしました。

菊池 光洋
入社26年目

工事部工事長

菊池 光洋

Mitsuhiro Kikuchi

大島 芳明
入社18年目

工事部

大島 芳明

Yoshiaki Oshima

武庫川水系武庫川
低水護岸工事(稲葉荘工区その3)

工事概要
基礎コンクリート108m
張りブロック工1140㎡
発注者
兵庫県さま
所在地
兵庫県尼崎市稲葉荘
工期
約8カ月(令和6.8/01~令和7.3/25)

低水護岸工事は、
暮らしと風景を守る防波堤。

「武庫川水系武庫川 低水護岸工事(稲葉荘工区その3)」は、約8か月間もの工期を要する大規模なプロジェクトでした。施工範囲は、基礎コンクリート延長108メートル、張りブロック工1,140平方メートルと広範囲に及び、河川護岸の機能強化と景観への配慮が求められました。また、現場は河川敷の公園に隣接し、利用者の安全を確保しながら工事を進める必要がありました。
この工事を担ったのは、2000年入社のベテラン・菊池と、2008年入社の中堅社員・大島。菊池は現場代理人として、発注者である兵庫県との協議をはじめ、近隣住民への対応、予算と工程管理など、多岐にわたる業務に従事。現場全体の調整役として全体を俯瞰し、的確な判断で現場を導きました。一方の大島は監理技術者として、施工管理・安全対策に加え、協力会社への指導・連携にも尽力。長期にわたる工事を円滑に進めるために、両者は日々現場に足を運び、課題と向き合いながら信頼関係を築いていきました。
とくに今回の現場は、人と自然の接点である「河川敷の公園内」であったため、工事による騒音・振動への配慮、自然環境や生態系への影響を最小限に抑える工夫が求められました。ふたりは丁寧な説明と掲示物の設置、作業時間の工夫を行いながら、周囲との共存を図りました。

低水護岸工事は、暮らしと風景を守る防波堤。

自然と技術のせめぎ合いに挑んだ日々。

「河川工事特有の難しさ」に最も挙げられるのは、水への対策です。護岸工事は川の中での作業が多く、水位変動や堆積物の処理、大きな転石への対応といった自然環境の影響を直接受けやすい施工現場となります。
菊池は大型ポンプを何度も稼働させて水をくみ上げるなど、安全性と施工精度の両立に苦心。河川の急な増水にも備え、迅速な対応策を準備しながら作業を進めました。また、河川敷に隣接する公園の一部を占用したため、散歩やレジャーに訪れる地域住民への安全配慮も不可欠でした。大島は水対策に加え、矢板を用いた転石処理や公園利用者との共存を意識した現場づくりに注力。また、工事の安全を守るためのフェンス設置や案内板の配置など、細やかな対策を行いました。さらに、今回の工事ではICT施工を積極的に導入し、バックホウにGPSを取り付けて3D設計データと連携させた掘削作業を実現。これにより高精度かつ効率的な施工が可能となりました。最先端のテクノロジーを用いたこの工法は、オペレータの技術だけでなく、施工管理者の設計理解も求められ、技術者としての総合力が試される工事となりました。
自然条件・周辺環境・技術革新という三重の難題に挑んだ経験は、ふたりの技術者にとって視野と可能性を大きく広げる貴重な財産になっています。

自然と技術のせめぎ合いに挑んだ日々。

構造物に刻まれる、誇りと責任のバトン。

この武庫川の工事は、ふたりの技術者にとって単なる業務ではなく、貴重な成長の場でもありました。菊池は、大型土工事における工程管理の難しさを肌で感じながら、ひとつの遅れが連鎖的に全体へ影響する重みを痛感。大型重機や複数業者の出入りが重なる中、緻密な段取りと関係者との密なコミュニケーションが、工事の成否を左右することを改めて認識しました。一方の大島は、ICT施工という最先端技術を現場で実践することで、自らの知識と視野を大きく広げました。3Dデータを活用した施工管理は、土木の世界に革新をもたらす可能性を秘めています。日々進化する技術を現場で実装していくことの意義と、その難しさを実感しながら、大島は次なる挑戦への意欲を高めています。
ふたりは、ただ護岸を築いただけではありません。自分たちの手で地域を守る構造物を形にすることの意味を胸に刻みました。菊池は「より多くの人に使われ、安心してもらえる構造物を作りたいです」と語り、大島は「業者から信頼され、誇れる現場をつくっていきたいです」と決意を新たにしています。
幼い頃に近所の工事現場を見て、土木の道を志したという菊池の原点。そして「自然を相手に、人の暮らしを支えること」に魅力を感じた大島の志。ふたりの技術者としての想いは、今回の武庫川の護岸にしっかりと込められています。その護岸はこれから何十年も、地域を守り、暮らしを支える静かな存在としてあり続けるでしょう。

構造物に刻まれる、誇りと責任のバトン。